自律神経失調症

症状はいくつもあるのに、検査ではどこも異常が出ない。めまいがして、動悸がして、胃の具合が悪くて、夜も眠れない。内科へ行き、耳鼻科へ行き、循環器でも調べてもらった。そのたびに「異常はありませんね」「お疲れでしょう」と言われて帰ってくる。そして最後に「自律神経失調症でしょう」と言われた——。当院にお越しになる方が、いちばんよくたどってこられる道すじです。

つらいのは、症状そのものだけではないはずです。説明のつく名前がないせいで、家族にも職場にも伝わらない。「気の持ちようじゃないの」と言われて、自分でもそう思いかけている。この状態が長引くと、体の不調の上に「わかってもらえない」というもう一つの重さが乗ってきます。

先に申し上げておきます。気のせいではありませんし、心が弱いから起きていることでもありません。体のなかで、筋道の通ったことが起きています。

自律神経失調症は、病名というより「状態の呼び名」です

まず言葉の整理をさせてください。ここが曖昧なままだと、この先の話がすべてぼやけてしまいます。

自律神経失調症は、診断基準がきっちり定まった一つの病気の名前として使われているわけではありません。検査で説明のつく病気が見あたらず、それでいて自律神経のはたらきのかたよりで説明できそうな不調がいくつも重なっている——そういう「状態」につけられる呼び名として使われることの多い言葉です。

だから、この名前をもらっても腑に落ちません。病名を告げられたのに、では何をどうするのかが出てこない。「ストレスですね」「様子を見ましょう」で終わってしまう。名前がついたのに一歩も進んだ気がしないのは、この言葉が原因を指す言葉ではなく、状態を指す言葉だからです。

ただし、これは悪い知らせではありません。名前が原因を示していないというだけで、体に起きている中身のほうは追いかけられます。

こんな訴えが重なっていませんか

  • めまい、ふらつき、床が揺れているような浮いた感じ
  • 耳鳴り、耳が詰まる感じ、音がいつもより響く
  • 動悸、息が浅い、深く吸いきれない、のどのつかえ
  • のぼせる、急に汗が出る、それなのに手足の先は冷たい
  • 胃がもたれる、食欲が落ちる、便通が乱れる
  • 寝つけない、夜中に目が覚める、朝からもう疲れている
  • 頭痛、首と肩の張り、目の奥の重さ
  • 気分が晴れない、集中が続かない、理由の見あたらない不安

これらの訴えには、3つの共通点があります。①一か所ではなく体のあちこちに散らばる ②日によって、時間帯によって出方が変わる ③調べても数値や画像には出てこない。この3つがそろうとき、体のなかで何が起きているのか。次にご説明します。

体の中で起きていること — 自律神経は交代制ではたらいています

自律神経という言葉はよく耳にするのに、何をしている神経なのかはあまり知られていません。専門用語をなるべく使わず、順を追ってご説明します。

意識が届かない仕事を、まとめて受け持っている配線です

心臓を打たせる。汗を出す。血管を太くしたり細くしたりして体温を保つ。胃腸を動かして消化する。明るさに応じて瞳の大きさを変える。どれも「やろう」と思ってやっていないのに、24時間動き続けています。この、意識の届かない仕事をまとめて受け持っているのが自律神経です。

ここが肝心なところです。意識では動かせない領域なので、「気合いを入れる」「前向きに考える」では動きません。何とかしようと頑張ってこられた方ほど、うまくいかなかったはずです。それはやり方が足りなかったからではなく、意志の届かない場所へ意志で手を伸ばしていたからです。

はたらく側と、つくり直す側。体は交代で回っています

自律神経は、大きく2つの系統に分かれます。

  • 交感神経=はたらく側の当番。仕事中、急いでいるとき、気を張っているときに前へ出ます。心拍を上げ、血管を締めて血圧を上げ、体をいつでも動ける状態に保ちます
  • 副交感神経=つくり直す側の当番。食事のあと、くつろいでいるとき、眠っているときに前へ出ます。血管をゆるめ、胃腸を働かせ、傷んだところを修理します

健康な体とは、どちらかが強い体のことではありません。当番がきちんと交代する体のことです。朝に前へ出て、夕方から引いて、夜は後ろの当番へ渡す。この受け渡しが毎日くり返されています。

失調とは「弱ること」ではなく「交代しなくなること」

自律神経失調症という言葉から、神経がすり減った・弱ったという絵を思い浮かべる方が多いのですが、起きていることはそれとは違います。はたらく側の当番が、夜になっても持ち場を離れない。これが中身です。

気を張る時期が数か月、数年と続くと、体は「いまは非常時だ」という設定のまま固まります。非常時の体は、修理より活動を優先します。すると、休んでいるつもりの時間にも回復の作業が進まず、そのぶんが翌朝へ持ち越されます。「寝ても抜けない疲れ」の正体はここにあります。

症状があちこちへ飛ぶ理由

自律神経は、どこか一つの臓器の担当ではありません。心臓にも、耳の奥にも、胃にも、汗腺にも、全身の血管にも、同じ神経が伸びています。家にたとえるなら、個々の家電ではなく、家じゅうを走っている配線のほうです。

ですから、この配線にかたよりが出れば、症状が特定の場所にとどまる理由がありません。その人がいちばん使いすぎている場所、いちばん余力の少ない場所から順に出てきます。だから人によって出る場所が違い、同じ人でも日によって場所が移る。そして、どの臓器も壊れてはいないので、その臓器を調べても異常は見つかりません。

症状が飛ぶのは、大げさに言っているせいでも、気にしすぎているせいでもありません。全身を走る配線の話なのだから、全身に出るのが道理なのです。

「異常なし」の意味と、先に医療機関へ行っていただきたい場合

ここは、体を診る側として省略できないところです。当院は医療機関の代わりではありません。順番として、先に医科で確かめておいていただきたいことがあります。

検査は「危ないものを外していく」ための手続きです

血液検査、心電図、CT、MRI。これらが見ているのは、形の変化と数値のずれです。腫れている、詰まっている、値が基準から外れている。いずれも「症状の説明をつける」ためというより、まず「命に関わるものが隠れていないか」を外していくための手続きだとお考えください。

ですから「異常なし」は、何も分からなかったという意味ではありません。危ないものは外れた、という重要な結果です。そこまで済んでいるからこそ、次にはたらき方のかたよりの話ができます。受けてこられた検査は、遠回りではありませんでした。

そのうえで申し上げると、はたらき方のかたよりは、いまの検査では像になりません。呼吸が浅いまま固まっていること、休む側の当番へ渡らないこと、体が力の抜き方を忘れていること。形が変わっていないのだから、形を見る検査には出てこない。症状があるのに異常なしと言われるのは、このすれ違いです。

まだ確かめていない場合は、先に医科へ

自律神経失調症という言葉は、便利な分だけ、別の病気の入口をふさいでしまうことがあります。次にあてはまる方は、当院より先に医療機関でご相談ください。

・動悸がする、汗の量が明らかに多い、食べているのに体重が減る、手が細かくふるえる → 内科(甲状腺やホルモンの検査)
・立ちくらみが強い、脈が飛ぶ、階段での息切れがひどくなった → 内科・循環器内科
・40代以降で、月経の変化とともにのぼせや発汗が始まった → 婦人科
・2週間以上、気分が晴れない。これまで楽しめていたことに関心が向かない。強い不安の発作がくり返し起きる。消えてしまいたいと感じることがある → 心療内科・精神科(うつ、不安症、パニック症が背景にあるとき、体だけを整えても届きません)
・経験したことのない激しい頭痛、手足に力が入らない、ろれつが回らない、顔の片側が動かない、物が二重に見える → 迷わず救急車(119番)を呼ぶか、脳神経内科・脳神経外科へ

これらを外したうえで、それでも不調が残る。あるいは治療を受けながら、体の側もどうにかしたい。そのときが当院の出番です。

お薬は飲みながらで差し支えありません

安定剤、睡眠導入剤、めまいの薬、胃薬。服用中のままお越しいただいて問題ありません。量を変える・やめるという判断は、処方した医師の領分です。当院からその話を持ちかけることはありませんし、ご自身の判断で急に減らすことはお控えください。体の側が変わってきた実感が出てきたら、その変化を主治医へご報告いただくのがよいと思います。

なお、当院で漢方薬の取り扱い・処方はしておりません。服用について知りたいことがあれば、医師または薬剤師にご相談ください。

当院が自律神経失調症をどう診るか

ここからが当院の話です。結論から申し上げると、当院は「心を落ち着けましょう」からは入りません。体の側から交感神経を踏み続けている入力を探して、そこを外していきます。

ストレスを減らせない人は、どうすればいいのか

自律神経の不調はストレスが原因、と言われます。間違いではありません。ただ、そう言われた方の多くは「その原因を減らせないから困っている」はずです。仕事は続きますし、家族の事情も変わりません。原因が動かせないところにある以上、原因の話だけをしていても行き止まりです。

そこで当院は、入口を変えます。緊張をつくっているのは心の側だけではありません。体の側からも、同じだけの入力が入っています。そして、こちらは動かせます。

呼吸は、一日に2万回近くくり返されます

体の側からの入力で、いちばん回数が多いのが呼吸です。落ち着いた呼吸でも一日におよそ2万回。その2万回が浅く速い形で行われていれば、体は一日じゅう「急ぎの場面だ」という信号を受け取り続けることになります。

では、なぜ浅くなるのか。姿勢が呼吸の形を決めているからです。座って画面に向かう時間が長いと、背中が丸まり、肋骨が下がって前へ閉じます。この形になると、呼吸の主役である横隔膜(胸とお腹を仕切っている、傘のような形の筋肉)が上下に動ける幅を失います。

主役が働けない分は、誰かが肩代わりします。引き受けるのは胸鎖乳突筋・斜角筋という、耳の下から鎖骨や胸骨へ、また首の骨から肋骨へと張っている首の前側の筋肉です。本来は坂道を駆け上がったときなどに手伝う脇役なのに、一日じゅう出ずっぱりになります。

首と肩がいつも張っている方の多くは、こっているというより、休みなく呼吸を手伝わされています。そして、その浅い呼吸そのものが、はたらく側の当番を持ち場に縛りつけます。首まわりの張りと自律神経の不調が、同じ方に一組で現れるのはこのためです。

力の抜き方も、体が覚えている動きです

もう一つ、当院が重く見ているものがあります。力を抜くという動作もまた、脳が覚えている運動のパターンだ、ということです。緊張したまま何年も過ごした体は、抜き方のほうを忘れています。「リラックスしてください」と言われて余計に力が入るのは、抜き方の手順が消えているからです。

ですから当院では、施術で楽になった状態をその場限りにしません。肋骨と骨盤の向きをそろえた姿勢で、息を長く吐きながら体を動かす——脳のパターンを入れ替えるためのそうした運動を、体の状態に合わせてお持ち帰りいただきます。施術から日常生活の動きまで一貫して担当しているのは、このためです。

「異常なし」と言われた方が次に来る場所が、内科でした

院長は、くまだ内科クリニックで5年にわたり鍼灸を担当してきました。そのほかに、東洋医学を専門とする鍼灸院での修業も経ています。

内科という場所には、検査で説明のつかない訴えを抱えた方がたくさん来られます。だるさが抜けない、動悸がする、胃の調子が戻らない。それでいて数値には出ていない。そこで聞き取るのは、症状の名前ではなく、その人の一日のほうです。何時に寝て、何時に起きて、どんな姿勢で何時間過ごし、いつ何を口にしているか。体の不調は、多くの場合、暮らし方の積み重ねが表に出たものだからです。当院が施術に加えて睡眠・食事・過ごし方まで一緒に組み立てるのは、この5年で身についた診方です。

院長が持つ国家資格は、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の4つ。施術歴は20年です。はり・きゅうを使うか整体で進めるかは、初回の状態を診たうえでこちらが決めます。ご自身で選んでからお越しいただく必要はありませんし、どちらでも料金は変わりません。

なお、自律神経のはたらきと鍼灸については国内外で臨床研究の報告があり、体のバランスを立て直す手立ての一つとして期待が寄せられている領域です。ただし、どう変化していくかは体の状態によって異なりますので、経過をお約束することはいたしません。

検査は異常なし、精神的なものと言われた方へ

当院にお越しになる方から、いちばんよく聞く言葉があります。「調べても何も出ないから、精神的なものでしょうと言われました」。

心の状態が体に出ることは、確かにあります。気分の晴れない状態が2週間以上続いている、強い不安の発作がくり返し起きているという方は、前の節に書いたとおり心療内科・精神科が先です。そこは譲りません。

ただ、そこに入りきらない方がいらっしゃいます。体の構造の側から自律神経が押され続けているだけなのに、検査に出ないという一点で「精神的なもの」にまとめられてしまう方です。

構造が神経を押しているとき、検査には映りません

背骨と肋骨の並び、骨盤の傾き、そして体の中を袋のように包んでいる膜(筋膜や内臓を包む膜)の引っぱり。これらは形の異常ではないので、画像にも血液検査にも映りません。それでいて、内臓や血管へ向かう神経の通り道は、そのすぐ隣を走っています。構造が偏ったまま固まれば、神経は押されっぱなしになります。

たとえば、原因の分からない胃の痛みで、病院を5回まわられて、そのたびに異常なしと言われた方がいらっしゃいました。当院では胃そのものではなく、みぞおちの奥の張り、呼吸の浅さ、背中側の動かなさから手をつけています。初回から変化を感じられ、3回目には普段どおり食事がとれるようになりました。あくまでお一人の経過であって、同じ回数で同じように進むとお約束するものではありません。

顎関節症も同じ見方をしています。あごだけを見ず、頭の骨のバランス、首すじの緊張、噛みしめをつくっている呼吸のほうから確かめます。

症状ごとの入り口と、よくあるご質問

自律神経の不調は、強く出ている症状によって診ていく順番が変わります。すでに主役がはっきりしている方は、そちらのページもあわせてご覧ください。当院での診方をより具体的に書いています。

はり・きゅうそのものについてははり・きゅうのページに、施術の進め方や料金にまつわる質問はよくあるQ&Aにまとめています。

Q:自律神経失調症は、何科にかかればいいのですか?

A:まずはかかりつけの内科です。ほかの病気が隠れていないかを確かめるところから始まります。特定の症状が飛び抜けて強い場合は、その担当科へ(めまい・耳鳴りなら耳鼻咽喉科、動悸なら循環器内科)。
気分の落ち込みや強い不安、発作のような息苦しさが中心にある場合は、心療内科・精神科が先です。

Q:「自律神経失調症」と診断されたわけではありません。それでも診てもらえますか?

A:診断名の有無は問いません。むしろ「はっきりした名前がつかないまま何年も続いている」という方が多くお越しになります。当院が診ているのは病名ではなく、体がどちらの当番に傾いたまま固まっているか、そして、そうさせている理由がどこにあるかです。

Q:ストレスが原因だと言われましたが、仕事も家庭も変えられません。

A:変えなくて構いません。原因を取り除けないかぎり良くならない、という考え方を当院は取っていません。
同じ量の心配ごとを抱えていても、肋骨が開いて息が深く入る体と、閉じたまま浅い呼吸を続けている体とでは、神経にかかる負担が変わります。変えられないものはそのままにして、変えられるところから手をつけます。

Q:自律神経の不調に鍼灸は効くのですか?

A:効果を保証する言い方はいたしません。自律神経のはたらきと鍼灸については、国内外で臨床研究の報告が積み重ねられている領域で、体を立て直す手立ての一つとして期待されています。
ただ、当院のやっていることは、症状を狙い撃つ作業ではありません。閉じた胸郭、浅い呼吸、休む側へ渡らない神経。症状が起きやすい下地のほうを、一つずつ減らしていきます。

Q:何種類か薬を飲んでいます。それでも受けられますか?

A:服用中でも受けていただけます。通院中の医療機関があれば、その治療は続けたままで結構です。当院が担うのは、医科の治療と並行して体の側を立て直す部分です。

Q:どのくらいの間隔で通うことになりますか?

A:回数を先に決めてお示しすることはしていません。体の状態と経過で変わるためです。進め方の一般的な考え方としては、つらさの山が高いうちは短い間隔で、山が下がってきたら少しずつ空けていきます。初回に体を診たうえで、間隔の目安をご説明します。無理に次回を取っていただくことはありません。
料金は初回7,000円・2回目以降6,000円(いずれも税込)です。

何年も続いてきた不調ほど、原因は「いまつらいところ」にありません。どこから手をつければいいか分からない、という段階で構いません。まずは体の状態を診させてください。

力新堂治療院(東大阪市・布施)

ご予約・ご相談:06-7174-9357(完全予約制)

受付:月〜金 10:00〜20:00/土 10:00〜15:00 定休:日曜・祝日

〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-2-20 陣内ビル2F(近鉄「布施」駅 西北出口から徒歩1分)

まずは、体に何が起きているかを知るところから

長年の痛みに悩まされている方、気軽にお越しくださいね。

電話で予約する 06-7174-9357
受付
月〜金 10:00〜20:00/土 10:00〜15:00
定休日
日曜・祝日
場所
大阪府東大阪市長堂1-2-20 陣内ビル2F(近鉄「布施」駅 西北出口から徒歩1分)

完全予約制です。施術中は電話に出られないことがあります。つながらないときは時間をおいておかけ直しください。